愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会のボッチャで、最も多くの金メダルを獲得したのはタイとインドネシアでした。どちらも金4個。ただ、その中身を見ていくと、2つの国の強さは少し違う形をしていました。
4つのクラスで4人が頂点に立ったタイと、個人戦の接戦を制してチーム戦も勝ち切ったインドネシア。8つの金メダルを振り返ります。
同じ「金4個」、違う中身
ボッチャの国・地域別のメダル数は、タイが金4・銀2・銅2、インドネシアが金4でした。タイの金はすべて個人戦です。インドネシアの金は、個人戦の3つと、24日のチーム戦(BC1・BC2)の1つでした。
タイ:4つのクラス、4人の金メダリスト
タイの4つの金は、個人戦の決勝があった21日に、1日でそろいました。
BC1 男子では、ウィサヌ・フアットプラディット(Witsanu Huadpradit)選手がシンガポールの選手に4-1で勝利。BC4 男子では、ポーンチョーク・ラープイェン(Pornchok Larpyen)選手が香港の選手に5-3で勝ちました。
2人とも、前回の杭州大会の個人戦王者として臨んだ大会でした。
なかでもウィサヌ選手は、2010年の広州大会から16年間、アジアパラで5大会続けて金メダルを手にしてきました。長く第一線に立ち続ける選手の存在も、タイの強さを支えています。
BC3 は、男女そろって金です。男子はウィトゥーン・チャンタカット(Withun Chanthakhat)選手がシンガポールの選手に4-3、女子はラダマニー・クラーハーン(Ladamanee Kla-han)選手が韓国の選手に4-2で勝ちました。
目を引くのは、看板選手が敗れても金の数が揺らがなかったことです。大会前、タイの中心として名前が挙がっていたのは、パラリンピックの BC2 王者、ワラウット・セーンアンパー(Worawut Saengampa)選手でした。
そのワラウット選手は、準決勝で同じタイのパクプム・リンチュム(Phakphum Linchum)選手に敗れて銅メダル。それでも、別の4つのクラスから金メダリストが生まれました。パラリンピックで複数の金を持つ選手を欠いての大会だったことも合わせると、1人のスターに頼らない層の厚さがうかがえます。
インドネシア:逆転で積み重ねた個人戦の3つの金
インドネシアの3つの金も21日に生まれました。ただし、どの決勝も楽な展開ではありませんでした。
BC1 女子のハンダヤニ(Handayani)選手は、マレーシアの選手に3エンドを終えて1-4とリードされました。最後の第4エンドに4点を奪って、5-4の逆転勝ち。今年の世界選手権に続く頂点で、試合後はうれしくて涙が出たと喜びを語っています。
BC2 男子のフェリックス・アルディ・ユダ(Felix Ardi Yudha)選手も、決勝でタイのリンチュム選手に0-3とリードされてから、第3エンドに3点、第4エンドに2点を挙げて5-3で逆転しました。
大会前は、ライバルの顔ぶれを見て少し気後れしていたそうです。それでも、積み重ねてきた過程を信じて試合に臨んだと振り返っています。
BC2 女子のギスチャ・ザヤナ(Gischa Zayana)選手は、香港の選手を相手に2エンドで5-0とリード。第3エンドに4点を返されましたが、6-5で逃げ切りました。今年の世界選手権で敗れた相手への雪辱でもありました。
代表チームのコーチは、3試合とも追いかける展開や追い上げられる展開が続き、見ていて胸がどきどきしたと振り返っています。
目標は「チーム戦の金1個」だった
実は、インドネシアのボッチャが大会前に掲げていた目標は、金メダル1個でした。コーチが本命としていたのは、世界ランキング1位のチーム戦です。個人戦の3つの金は、その前の大きな上積みでした。
24日のチーム戦の決勝では、ムハマド・シャファ(Muhamad Syafa)選手、ギスチャ選手、フェリックス選手の3人が、タイに11-3で勝利。前日の準決勝でも、韓国に12-2と大差をつけていました。
キャプテンを務めたフェリックス選手は、強い相手に対して小さなすきを探し、点を取れる場面では確実に取りにいったと話しています。ギスチャ選手は、仲間と一緒にメダルを取れたことへの感謝を口にしました。
国内の練習拠点には、大会と同じカーペットを敷いたコートが6面あり、大会前もそこで練習を重ねてきたといいます。コーチは、この環境が準備を支えたと話しています。
日本との対戦から見えたもの
BC3 では、高橋和樹選手が個人戦の準決勝でウィトゥーン選手に3-4で敗れ、銅メダル。高橋選手と関根彩香選手のペアも、予選の初戦でタイに2-5で敗れました。そのペアが最後は金メダルをつかんだのは、すでにお伝えしたとおりです。
チーム戦では、日本は予選でインドネシアに1-21で敗れました。BC1 女子のハンダヤニ選手は、今年の世界選手権の決勝で日本の遠藤裕美選手に8-2で勝っています。アジアのトップは、そのまま世界のトップでもあります。
ロサンゼルス2028へ
インドネシアの選手たちが見すえるのは、2年後のロサンゼルス2028パラリンピックです。シャファ選手は、ロサンゼルスまで今の調子を保ちたいと話しています。コーチは、チーム戦は2027年の地域選手権を経て、ロサンゼルスへの出場をめざす考えです。
日本にとって、タイとインドネシアはロサンゼルスへの道のりで何度も向き合う相手になりそうです。
あわせて読みたい記事です。
情報の確認について
この記事は、次の情報をもとにしています。
- 試合の結果・エンドごとの得点・メダル数:大会の公式結果サイト(ボッチャ)(2026年10月24日確認)
- インドネシアの選手・コーチの話:インドネシアパラリンピック委員会(10月21日)
- 大会の目標、チーム戦のあとの話、練習環境:インドネシア青年スポーツ省(10月21日・10月24日)
- ハンダヤニ選手の話:国際パラリンピック委員会(IPC)(10月21日)
- ウィサヌ選手のこれまでのアジアパラの金メダル:国際パラリンピック委員会(IPC)の2010年大会・2018年のまとめ、タイのデイリーニュース(10月21日)
- 大会前の各国の紹介、世界選手権の決勝:アジアパラリンピック委員会(Asian Paralympic Committee)(10月6日)
海外の記事のコメントは、日本語に訳して要約しています。試合の映像は確認していません。
